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「灰と幻想のグリムガル」14巻 感想 決して駄作ではない【第二弾】

 

こんばんは、へるもです。

 

灰と幻想のグリムガル14巻 parano maniaの感想の第二談と考察です。 

前回はひたすらセトラさまさまとだけ書いていましたが、今回はもう少し噛み砕いて書いてみたいと思います。

もちろんネタバレありなのでご注意ください。

 

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灰と幻想のグリムガル14巻より 十文字青著 イラスト白井鋭利

  

 

シホルの物語はこれから始まる

最初の感想の副題は「シホルの物語がみたかった」ですが、これは違うなと今は思います。13巻で中途半端におわったのではなく、始まったのかな、と。

 

herumo.hatenablog.com

 

 

シホルの孤独

パラノは人の感情がむき出しになってしまう世界でした。魔法は何に愛着を持っているかを暴き、トリックスターになると涙があふれ出るように想いを口に出してしまいます。

 

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灰と幻想のグリムガル14巻より 十文字青著 イラスト白井鋭利

 

そんな中でのシホルの感情は痛かった。ひとりぼっちは嫌、愛されたい。だから頑張る。頑張っても無駄だった。愛されたい。親愛ではなくて愛がほしい。

トリックスター形態(邪神形態と勝手に呼んでいる)の外見の美しさと内面の悲壮さのギャップがいっそのこと恐ろしいです。

 

管理人のつたない語彙では、痛い、つらい、悲しいというような表現しか出てこないのですが、シホルの描写については下記のブログ様の感想が素晴らしいと思いました。一部紹介いたします。

 

シホル、劣等感を抱えてる子だとは知っていたけれど、こんなにも心で泣いて傷だらけだったのか。今もずっと。
大嫌いな自分は欠陥品で穴だらけ。だから穴を埋めるような愛情がほしい。
彼女の痛いほど切実な叫びが辛くて辛くて、むしろ共感してしまうところもあって、無性にシホルのことが愛しくなりました。エゴ丸出しで愛を乞うてもいいじゃない。誰か彼女を抱きしめてあげてほしい。 

晴れたら読書を みかこ様

https://haretarabook.com/2018/12/26/22116 

 

 

シホルが欲しかったもの

命を顧みないハルヒロやクザクの献身は客観的に見て、十分に強い絆だと思うのですが、シホルが欲しいのはもっと自分だけに向けられたもの(愛)なんでしょうね。

 

マナトの死が悲しすぎてモグゾウの死を悲しみきれない様子や、自身が男女の関係を恋愛関係でしか捉えられないという描写が隋所に見られました。

新しい魔法を会得したり、副官ポジションになったり、ずっと頑張ってきてハルヒロからも頼りにされるようになってきたシホルですが、内心ではずっと愛が欲しかった、ということなのかな。つらっ。

 

そういえば、シホルが副官ポジションとして機能し始めたのは、ダルングガルの川のほとりで「メリィのこと、すき?」とハルヒロに聞いたあとだったような。そこでのハルヒロの反応から、シホルはハルヒロからは愛をもらうのではなくて、誉めてもらえればよいと妥協したのかも知れません。

シホルルートというものがもしあったとしたら、あそこ分岐点というか。

  

 

果たしてシホルは元の姿を取り返せるのか?

トリックスターとなり満たされて死んでしまった縫のエピソードからすると、シホルの復活は絶望的ですが、現状ではそうとも言い切れないと思います。

 

 

そもそもシホルは本当にトリックスターになったのか??

この点が疑問です。個人的には(ドッペルの魔法を使っており)人とトリックスターの間の曖昧な存在ではないか?と思っています。

根拠というか、このような発想になった原因は2つあります。

 

1つ目が意思疎通がある程度可能という点です。

かなり多くのトリックスターが出てきましたが、シホルのようにある程度の意思疎通が可能なトリックスターというのは出てきませんでした。たぶん。

花女とかはアリスCとコミュニケーションが取れそうな描写だったので、意思疎通というのがトリックスター”ではない”証拠にはなりませんが、他のトリックスターに比べてシホルはずいぶん人間味がありましたよね。

 

2つ目が後半で特に頻繁に口にする「どうでもいい」という台詞です。

これは、パラノ初期の人間状態でのハルヒロが何度か口にしていた言葉です。もしシホルが完全なトリックスターであれば強い衝動を示さずに投げやりな言葉を放つというのは少し矛盾を感じます。

なみだナミダでトリックスターとしての要素を多く持っている片鱗は間違いなくありますが、完全にトリックスターなのか?というのはやはり疑問です。

 

自己肯定感の低いシホルの魔法は間違いなくドッペルになるでしょう。イオで同じ疑惑が出ているように、邪神形態の中にいるのではないでしょうか?

 

 

そもそもトリックスターという区分が存在するのか?

トリックスターという区分についても疑問が残ります。

魔法は3種類(4種類)というのがパラノの原則のようでしたが、これは王が他人の魔法を”縛る”ために作ったものでした。王様頭いいな。

 

トリックスターも同じような王様の決めた区分の一つで、王様が理解できないものをトリックスターとしてまとめているだけで、トリックスター=一度なったら絶対復帰できない、とは限らないように思います。

 

たとえば鉄塔でさびた男は、人でありながら徐々に錆び、死後も錆びた鉄のように朽ち果てます。

これは人なのでしょうか。トリックスターなのでしょうか。どちらでもなく、人、トリックスター夢魔、半魔以外の存在がある証左では?

  

 

シホルの救い

 

シホルがどうなるのかはよく分かりませんが、シホルの内心がさらけ出されてしまった以上、彼女もパーティも彼女自身に向き合うことが求められます。

 

露見したとき始めて事件が始まる。露見しなければどんなことも事件にならない。というのはミステリー小説でよく使われる言ですが、パラノにきて始めてシホルの物語が露見し、始まったのだなと思います。

 

メタ的に言えばこれまで積み上げてきたクザクとのフラグは粉々になってしまったような印象がありますが、じゃぁハルヒロの誠実さが救いになるのか、というとよく分かりません。やっと始まった彼女の本音のストーリーに期待を膨らませてしまいます。

 

(この点、グリムガルに帰ったのが不安です。記憶喪失や隔離でなかったことになったら嫌だなぁ)

 

 

安定のハルヒロとキャラ立ちしてきたクザク

無条件に信頼するクザクと若干引きつつも誠実にそれを受け止めるハルヒロコンビが結構好きなんですよね。これまでもその傾向はありましたが、それを軸にクザクのキャラがたってきたなと思います。

なんとかしろっと言われて全裸に近い格好になるクザクとか笑ってしまいます。そして魔法はナルシィという。どんだけ自分(の肉体)のことがすきなんだ。(笑)

あと、メリィの変化に全く気づいていないところとかはちょっと馬鹿っぽくて微笑ましいというかなんと言うか。

 

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灰と幻想のグリムガル14巻より 十文字青著 イラスト白井鋭利

 

序盤こそアリスについていくだけだったハルヒロも、合流後は大ボスを倒したりかなり活躍しています。自分の判断にそれほど強い自信はなくて、でも割と正解を引いているというタイプなんでしょうね。

 

あと、ハルヒロのどうでもよくない!は格好良かったですね。13巻と14巻前半のグダグダ感は凄かったですが、パーティ終結後は結構楽しめたような気がします。

 

 

私たちはパラノを旅した

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アマゾンでの「灰と幻想のグリムガル」商品ページより

 

前の感想でもあれがあ~だったらいい、これがこ~だったらいいとかなり低評価ばかりをしていました。アマゾンレビューに多くあるとおり、ぐだぐだして苦痛だったからです。

(ちなみにアマゾンでは★1つの次に★5の割合が多いのが面白いです。)

 

そのグダグダも改めて読み返すと悪いものではありませんでした。

というのも、パラノを旅するハルヒロたちの感情をそのまま体験できたのでは?と思うようになったからです。

 

おそらく、パラノは変化が激しすぎるのだ。

灰と幻想のグリムガル 14巻 十文字青著より 

いったい何がどうなっているのか、とは考えないようにしている。というよりも、いつの間にか考えなくなっていた。おそらく、考えてもしょうがないと、骨身にしみたからだろう。

灰と幻想のグリムガル 14巻 十文字青著より

 

セトラとハルヒロの他界パラノに対する感想なのですが、この文章を見たときはっとしました。

なんか自分が今この本に感じていることと同じだな、と。

 

 

読者もハルヒロもパラノに戸惑い、あきらめた

私がこの本を読んでいるとき、ただただハルヒロ達が描かれるページを心待ちにして、それ以外の部分はほとんどスルーしていました。

 

ストーリーとして何が起こっているのかいまいち理解できないですし、新キャラの心情描写も多く(=変化が激しく)、ついていけない。

加えて、13巻のケジマンも含めて変なキャラが出てきてストーリーを掻っ攫うというのも、いつものことで考えてもしょうがない、楽しめる部分を楽しもうという気分になっていたのは事実です。

 

冗長に冗長を重ね、伏線を重ねカタルシスを生むような計画性に乏しい文章をあまり楽しめず、ひたすら与えられるものをのみくだす読者の姿というのは、今回のハルヒロのパラノ冒険譚に非常に似ています

 

 

もちろん旅や読書がネガティブな感情に占められていたわけではなくて、ポジティブな部分もありました。そしてその部分もやはり共通した感情を持てているのでは?と思います。

 

再開を喜ぶハルヒロたち、はっちゃけるクザクに笑う読者達。

苦難の大きさと比較するとささやかに見えてしまうというのは正直な感想です。それでも辛い体験の中で自分だけの喜びを見出せるというのは、だからこそ嬉しくかけがえのないものです。

個人的にクザクとの再開で涙をこみあげてしまうセトラがツボでした。やはりセトラがいいという感想になる。)

 

私達もハルヒロ達と同様に「妄想と狂気のパラノ」を旅していたのかも。

そう考えると決して駄作と決め付けるべきでなく、むしろ何年たっても不意に思い出してしまうのだろうと思わされるような13、14巻でした。  

 

 

読みにくかったので小ネタを別記事に移しました。

herumo.hatenablog.com

 

 アニメの感想です。主に9話です。

herumo.hatenablog.com

 

 

 

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 アニメの出来がよく無料で見れるサービスもあるのでぜひ!

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