【灰と幻想のグリムガル】シホルの物語は7巻から始まっていた。15巻の前に。
こんばんは、へるもです。
14++が出てから音沙汰がなくなってしまいましたね。新展開はどうなるんでしょう。リセットされてしまったぽいのがどうしても気になる、、、
実は次は14+++が出たりするのでしょうか。
スト2(ストリートファイター2)のあとスト3がなかなか出なかったことが思い起されます。
スト2の故事を鑑みるならグリムガルは新展開に対する産みの苦しみのようなものがあるのでしょうか。
よくわからないですが、14+、14++の評価が高かったこともあり楽しみです。
と思って調べていたらグリムガル15巻の話がちょうど出ていました。14+++ではない。年内発売なんだな。
グリムガル15巻の初稿、書き終えた。つかれた……。
— 十文字青 (@jyumonji_ao) November 10, 2019
グリムガル新刊来月ですってよ pic.twitter.com/NEHeBXkln0
— 閃光壊獣もんじ (@monjirider2) November 10, 2019
15巻がついにアマゾンなどでも出るようになりましたね。
この記事は灰と幻想のグリムガル15巻発売前に14++巻までの感想、考察を改めて書きたいという記事であり、ネタバレがあります。ご注意を。
15巻を前にして思うこと
パラノ編の感想記事が1年近くたった今でも読んでもらっているのですが、そこで自分の頭の中で議論になるのはいまだにパラノ編は結局よかったのか、悪かったのか、という点です。
結論としては、管理人としてはよかったなって思います。
パラノの世界単体はグダグダしていたかもしれないけど、7巻に始まったシホルの物語を浮き彫りにする舞台装置としてはすばらしい。(ほかに手段が乏しい)
なおかつ、シホルの精神性を知れてより好きになりました。
そんな感想をぐだぐだ書きます。
ぱっと読んでの感想
最初の記事では酷評に近いことをかいていました。
このとき書いたことは紛れもなく当時の正直な心境で、なんじゃこりゃと思ったのは事実です。
次々と移り変わる展開や、変人ムーブでしか書き分けられていないに見える新キャラについていけず(頭というより気持ちが)、無理やり飲み下しているような本の読み方をしていました。
Amazon商品ページより
アマゾンのレビューを見ても似た感想を持っているっぽい。
でも、80もレビューがあるのに賛否両論であるのはちょっと面白いですね。ささる人にはささった模様。
酷評すべきお話なのか?
ただ、13、14巻で繰り広げられたパラノ世界での物語に着目すると意外に成り立っているな、と思いました。
「リアル鬼ごっこ」のようにずっと薄っぺらい話が続いていたわけでもなくて、そこには意外性だったり、キャラクターの多様性(王様とか錆びた男とか)がありました。
これらの巻をパラノの世界とトリックスターたちの群像劇と解釈すると結構すんなり読めたように感じます。
今更ながらですが、こんなえらそうなことをいって恐縮です、、、
ハルヒロの物語としてはどうだろう?
さて、ハルヒロたちのお話としてはどうか。
繰り返しになりますが、やはり初見はなんじゃこりゃ感が強いです。
私たちが期待するのはハルヒロたちが主役の話なのに、パラノに入るきっかけはうざいやつ(ゲジマン)、冒険もあまりせず付いていくだけ、回想を聞くだけ。
ハルヒロらが主体性を発揮するのは本当に最後の一部だけで、2巻もあるのに邪神シホルに触れられるのが少ししかないという”物語としての脇役感”のがストレスの原因になっていたように思います。
ただ、13,14巻のパラノ世界の話だけをみるのではなく、12巻続いたこれまでのストーリーを踏まえた上でパラノの物語がある、と考えると、ハルヒロたちの物語としても色々感じ入れるところはあるな、と思います。
特にパラノの世界設定は下記の点でおもしろい。
・トリックスター化により改めて実感したシホルの意志の強さ
・変身という要素が魔法として出てきてもおかしくない下地ができた
シホルの強さとは
シホルは何かに依存してしまう精神的なもろさや恋愛感情により意識をひっぱられる精神性を確かにもっています。
マナトの死、もぐぞーの死の場面でそれがはっきりと描写されていました。
それでも、彼女の場合、物語後半でそれに引きずられていたようには見えなかったんですよね。
むしろ、実質的に副リーダーになるといったような強さを見せるようになったり、彼女もまたグリムガルで成長したんだなと思っていました。
それでもパラノで唯一トリックスター化してしまったのがシホルです。
鎖は弱いつなぎ目で突然千切れる
精神が弱い順に変化せざるをえない設定が本当に素直で絶妙な設定です。
だって読者が彼女の心の弱さを、心の強度の絶対値低さを直感的に理解できるんだもの。
旅では平気そうに見えて、メリー争奪戦の際にはハルヒロの離脱にも気づくぐらい冷静な精神性を発揮していたのに、やっぱりシホルは一番精神的にもろかった。
精神と意思
強くなったように見えて、その実、ずっと無理をしていたんだな。
意志の強さと精神の強さって別なんだな、と改めて実感します。
ゲームでいうなら、精神が強いというのはHPが高いみたいなもので、意志が強いというのは冷静に状況に対処できる、ということなのでしょう。
シホルの成長は意思力の成長であり、精神の頑強性というものは強くなかった。
いざとなれば自分で考える癖が知らずについている。できなければ死んでしまうかもしれない。あるいは、仲間を死なせてしまう。
灰と幻想のグリムガル 9巻
彼女は無理をしていて、愛されたくて、安心したくて、ずっと血を流しながらあの世界を暮らしていた。
だけど、流れる血はそのままに生き残る術を身につけていた。
だって仲間が死んだから。
だってそうしないと自分も仲間が死んでしまうから。
変わらないといけない。
彼女の精神面での強度はずっと弱いままで、それでも仲間と何とか生き抜くために意志を強くもったのでしょう。
シホルのやったこと
考えてみればシホルがやっていたことって、ダークという新たな魔法の切り口を見つけたり、副官になったり、自分のできる範囲をもっと増やそうというものでした。
魔法使いとして基礎スペックをあげるというよりは、今ある手札を組み合わせて、より強力な”役”を作り上げていくような感じでしょうか。
ここらへんはランタやユメとの対比になっているように感じます。
このままでは駄目だと時間がかかってもスペック底上げのためにパーティ離脱→修行モードに入ったこの二人と、今の形を保ちつつすぐにできることを探し始めたシホル。
どちらがいいか悪いか、それは一概には言えません。
が、”ハルヒロパーティ”によりそった選択をしたのはシホルじゃないかな、と思います。
責任感の見せ方は人それぞれ
ハルヒロもシホルと同じく”できること”を探して成長してきたタイプで、能力があったわけではななかったのにリーダーとしての技量を磨いてきたわけですよ。
リーダーがそんな姿を見せているのに、ユメやランタのようにいち抜けた!をするキャラと、リーダーをサポートするべく頑張るキャラならやはり後者(=シホルやクザク)に好感を持ってしまいます。
頑張ったあげく邪神化してしまいましたし、14+、14++で見せたユメやランタの成長度合いを見ると彼らの選択肢も正解の一つだったとは思いますし、彼らが悪いとはまったく思いません。
しかし、ハルヒロ含めてこんな個より集を優先する頑張るキャラが好きなので、なんだかシホルの好感度がストップ高で、こういう感想を持てることもパラノ世界の意義だったのではないかと思います。
今日のお絵描き。グリムガルのシホルちゃん_φ( ̄∇ ̄* )髪留め必須 pic.twitter.com/Bxm4sH4zLP
— 仁井学 NII Manabu (@aleos696) February 13, 2019
ハルヒロたちが向き合うべきだったのは
15巻以降どうなるんでしょうか。
シホルの本音がさらされたことで、ハルヒロたちはシホルに向き合わないといけなくなりましたし、シホルだってパーティに向き合わないといけない。
実は、読み返すとここらへんは10巻あたりで惜しいところまでいっているんですよね~
シホルには全部見透かされているような気がして
、、、
でも、シホルサン、あんた自身はどうなんだよ?仲間、仲間、仲間で。シホルサン的にはそれでいいんですかね、なんて思ってもいえない。
灰と幻想のグリムガル 10巻
「きみの態度って、そうやって腰を低くしてれば責められないだろうっていう魂胆が透けて見えるよね。
、、、
何か思ったら、思ったそのときに言っておかないと、二度と言えなくなるかもしれないからね。」
灰と幻想のグリムガル 9巻
クザクは献身性を認めつつも危うさに気づいていたり、シホルの自己犠牲はあくまで利己的なものということを先輩冒険者ツガに指摘されています。
ここらへんもっとお互いに向き合えるタイミングさえあれば、パラノでももっと違う結果になっていたのかも。
メリィ死亡イベント+そもそも生き残ることすら保障されていないグリムガル世界では生き残ること以外に力を割くことが難しい感じもしますが。
それにしても、シホルの副リーダー化(7巻あたり)とそれによる反作用の表面化(9、10巻で指摘)とアクシデント(13、14巻)と、巻をまたいだ壮大なシホルの物語にも見えます。
シホルの本音が露見した13、14で始めてその物語がスタートしたのではなくて、7巻あたりから序章は始まっていたのです。
これから先は?
メリィの状態もよく分からない状態ですし、これまでは強固な絆でグリムガルの世界(パーティの外側)と戦う話でしたが、パーティの内側とも向き合うような展開になるのでしょうか。
かたや愛してほしい、かたやもう死んでいる、となかなか解決策の見えないハードな感じではありますが、、、
変身するということ
さて、次は邪神形態(トリックスター)の存在についてです。
こちらは輪をかけて妄想が進む、、、って感じですが(笑)
邪神形態は普通に素晴らしい。
シホルの髪が長いのも全裸なのも、武器が涙なのも、精神が不安定なのも、全てが良い。
なんとなく体のサイズが3倍くらいになってるんじゃないかと思ってしまいますが、サイズはシホルサイズですよね。そっちのがいい。
変身するだけでわくわく度up
ヒーローものの変身しかり、まどかマギカの魔女化しかり、SAOの心意(だっけ?)しかり、ようぜんの変化しかり、Zガンダムしかり、姿が変わるってやっぱりロマン。
水の形が器に沿うように、ビジュアル的な変化は精神性の変容をストレートに実感できます。
何故変わってしまったのか、何故その姿なのか、そこに物語性を見出すことができ、とてもワクワクできることですよね。
さらに、それを乗り越えたとき、中身はどうなっているのか?
その変化を楽しめるのも一興です。
トリックスターになったシホルの物語は今始まった、そんなツイートをしたことがありますが、変身後のシホルがどんな風になっていくかとても楽しみです。
グリムガルのパラダイムシフト
上でも述べましたが、注目したいのはこれは技や魔法として昇華される可能性があるということです。
想像してください。今後ピンチになった時に、邪神シホルが奥の手として出てきたりしたらめっちゃよくないですか?(笑)
なんだかんだ技が地味なグリムガルの世界の変身という要素を取り入れるのは非常に難しいことでした。
しかし、パラノ世界のおかげで登場キャラクター達は変身という技術を文脈の中に取り込むことに成功しました。それだけパラノに存在価値があるというものです。
本当にそうなるかは知りませんが、そんな選択があるかもしれないという妄想だけでお腹が満たされる気分ですね!
まとめ
パラノ編はワンピースの空島編植物学者の回想のような「週間連載だといらいらするけど、読み返すと面白い」みたいなタイプの物語ですね。
7巻から一気読みすると、彼女の物語が確かにありました。
そして読んでいるとわかるクザクのけっこういい仕事している感。
パラノでバーサクモードになった彼についても書きたかったのですが、長くなってしまったのでとりあえずここまで。
15巻どうなるのでしょう。
アームズみたいにやばくなったら変身して敵を圧倒し、全裸になってほしい。
シホルだけじゃなくてね。