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劇場版「SHIROBAKO」感想 シロバコの正統続編。日本よ、これがシロバコ劇場版だ!【ネタバレあり】

こんばんは、へるもです。

 

劇場版シロバコを見に行ってきました。その感想です。

いつも通り、ネタバレを含みますのでご注意ください。

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ぱっと振り返っての感想

いやー面白かったです。なんか変なシーンも多かったですが(笑)

 

やっぱり離散したメンバーがまた集まって同じ方向を目指すっていいですよね。

 

 

おっさんの生き様

メンバー集合の中でも熱かったのは遠藤さんと下柳さん

友達だから働きたいのでもなく、温情をかけたいから働きたいのもなく、実力を認めていて、一緒に働いたら(現時点での)100%を世に出せるかもしれないから働こう、と。

いやーこんなこと言われてみたいものです。

正論おばお姉さんはいい人なんだけどなぁ。ちょっと損な役回りでしたね。

 

またどこかで書きたいですが、遠藤さんに関しては夫婦愛も描かれており、SHIROBAKO登場人物で一番恵まれているのは遠藤さんでは、、、!?と思ったり思わなかったり。 

 

 

あとは山田。

監督肌ではないといっていたわりには超監督になり変な服を着ていて笑いました。

ムサニがやばい、頑張らなくちゃ!という雰囲気の中、彼だけは異質な存在感と大暴落フラグを序盤から放っておりいいアクセントでしたよね。

ムサニ復帰時に製作女子から冷たい目で見られているところが非常によかったです。

ニコニコの再放送でも山田への言及は多く、この映画で人気急上昇したようですね(笑)

 

 

しろばこのおっさんが担うもの

映画の世界(4年後)の中で印象的だったのがヒロインたちが”可愛い女の子”ではなくなっていたとこかな~。”おっさん”化していましたね。

 

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 アニメ SHIROBAKOより

 

SHIROBAKOでは女子は可愛くおっさんはリアルめに描かれてきました。

これはアニメに求められる華美さは”女子”が、社会人生活・アニメ作りのアイコンは”おっさん”が担っていたといっても過言ではないでしょう。

 

アニメ放映時はどんなに忙しくてもみゃーもりは礼儀正しく、家は綺麗で、絵馬はスキルアップを強く意識しながらも、昼ごはんを食べに家に帰っていました。

これはヒロインの綺麗さを保つための措置であり、なおかつ業界にひたった人間とのギャップを生み、ヒロインの新人っぷりを強調する効果があったのだと思います。

 

 

ヒロインのおっさん化

それが今作ではみゃーもりの部屋はきたねぇわ、事務所で椅子をベッドに仮眠をとるわ、、、(笑)

事務所で仮眠といえば監督がよくやってきたいたことで、映画のヒロインたちは業界にすりきれた”おっさん”サイドに移行してきたのだな~と思いました。

これは成長なのか順応なのか、果たして別の何かなのか、、、

 

特にみゃーもりはプロデューサーとはいえ、自分の力ではいかんともしがたい部分があるので相当うっぷんがたまっていたのではないでしょうか。

それがよく分かったのは部屋の汚さの部分です。

  

 

部屋の汚さのリアル

かつてはいきなり姉ちゃんが来訪してもあわてて片付けることすらしなかったのに、今はだいぶとアレでした。

キッチンは洗っていない皿で山盛り、食べかけの何かがあって、脱ぎっぱなしの服も散らかっています。

きっとヒロインズで集まるようなこともないんでしょうね、、、

 

特に目が引き寄せられたのはジンカクテルのビンです。

これってコンビニで買う人が多いですよね。マルエツ(首都圏によるある店)みたいなスーパーで買うものではありません。

精神的にも体力的にも疲れきり、コンビニ暮らしのみゃーもりの生活が想像できてしまいます

 

さらにアニメでは部屋のみでもビールを飲んでいたみゃーもりがなぜ、ジンカクテルに手をだしたか、、、オシャレだからインスタに上げようとかそんなことは絶対にありません。

きっと気晴らしに時々ビールを飲んでいたけど、それに飽きてしまったがために別のものに手を出したのではないでしょうか。

つまり、ビールに飽きるくらい飲酒習慣があったのでは、、、もうそれくらい疲れきっていたのでは?と邪推します。

 

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昔のみゃーもり

 アニメ SHIROBAKOより

 

見た感じはなんとなくまだ耐えれていそうだったみゃーもりの内面を”散らかり具合”で表現した方法はうまいなぁと思いました。

とくにシロバコではみゃーもりの部屋がよく登場しましたし、自然に察することができました。

 

部屋と内面のリンクという意味では監督の部屋もそうです。

何もない部屋に、昔は何かが貼ってあった形跡山盛りの洗濯物

昔は何かがあったけど、もはや何もない、やる気もないという監督の心情を示しているようで、空虚さがやばかったです。

 

監督がネガティブなこといっても、あっ察し、状態になっているので何も言えん、、、

 ここらへん、製作者たちの生活のリアルが垣間見えます。 

 

 

もちろん成長している

一方で着実に強さを身に着けているのは絵馬でしょうか。

 

作画監督となる際に、みゃーもりに対して圧をかける部分は凄かった。あの早口っぷり、矢継ぎ早っぷりは、内容の伝達ではなく「脅し」でしょう。

何も知らないわけじゃないんだぞ、ちゃんとやれよ、といった類の。

 

パンフレットにも書いていましたが、きっと直接的に言わないと自分が追い詰められる状況がこれまであって、だからこそ言葉にしているのでしょう。

これまでの体験やその心情を思うと辛いなぁと思います。

 

でも強くなるのは誰も守ってくれないフリーの原画マン(というのか?)には必須なスキルです。

頼もしくなっている部分については成長しているなあと思いました。

 

この強くなっている感じはムサニ製作女子にも言えることです。

追い込まれている状況でも混乱せず、たんたんと打開策を並べていく彼女らは頼もしいのですが、一方で現実を知っちゃったんだなというシーンが多かったです。

うわーって顔をしながら彼女たちを横目で見るみゃーもりがおもしろかったです。(笑)

 

 

どんなストーリーになるのだろう

さて、少し話題が変わりますが、SHIROBAKOヒロインたちの最初の夢は皆で七福神をつくること、アニメのストーリーは紆余曲折あれど5人全員が同じアニメに関わることができた!やったね!というものでした。

 

じゃー映画はどういうストーリーを用意するのだろう?

それが鑑賞前の管理人の疑問でした。

まさか七福神を作るわけでもなく、でも5人でアニメを作るのはもうやったしな、、、と。

 

答えは見ての通り、5人も同じアニメに関わるというアニメと同じかたちでした。

ただし、ヒロインたちはステップアップしており、アニメのときより深く関わります

 

 

きらめきのないステップアップ

ここらへんの塩梅は凄くスキでした。

なんでアニメと同じストーリーになると予想できなかったのでしょう。同じでいいじゃん!

 

”あなたが主役”を全員に投げかけていたとおり、一人ひとりが重要な役割を果たして生まれるのがアニメです。その骨格は変わらないんですね。

その中で皆が少しずつステップアップしてます、そして一人ひとりの実力があがったからこそ普通の半分以下の期間で作品を作ることができました!という直球を見せてくれたのは納得感も高く、なによりお仕事アニメというシロバコの空気感によくあっていました。

 

見たかったのは派手で奇特なアフターストーリーではなく、アニメの彼ら彼女らはどうなったのか、というシンプルなものだったんですね。

(その点、TARITARIのヒロインが謎理論シングルマザーになっていて話題を呼んでいたのは好対照かもしれません)

 

 

アニメーションのカタルシス

終盤の展開については自分でハードルあげて凄いなぁと思いました。(笑)

「SIVAの作り直し前は結末のカタルシスがないな。でも思っているものを作ってもらえるかわからないしな、、、」→「できらぁ!(遠藤)」って展開ですからね。

シロバコの結末にもカタルシスを期待してしまうのが人情というものです。

 

SIVAの作り直し後の映像がそのままシロバコのラストになっていましたが、皆さんはどう感じたでしょうか。

管理人はぶっちゃけアニメーションの力ってすげぇえってなりました。(ちょろい)

 

最初の一人称視点から始まり(ガルパンファンなら「みほまほ  vs. アリス」を思い出したことでしょう。)、多数を動かす豪華な動きに、加速度をもって美しく動くビート板、、、

同じ展開のはずなのに作り直されたSIVAのエンドは迫力がまったく違いました。

 

 

最後は初心に戻って

このプロによるbefore afterをみせてストーリーを締める方法はアニメ10話くらいまででよく行われていたことです。

 

アニメの初期でアニメに関わる人たちのいわば”現場の個人技”の話があって、後期で作品を作り上げる上での大きな枠組みの問題(ほかのアニメ会社との衝突や、原作者との関係とか)を描いていました。

劇場版でもその”大きな枠組みの問題”(納期、権利関係)を引き続き書くわけですが、最後にまたアニメ初期と同様にアニメ製作の現場で関わる人の話に戻ってきたわけです。

 

きっとアニメ業界はこうやって救いとトラブルが循環しているのでしょう。

アニメの製作現場を描いたシロバコの終わりとしては象徴的で凄くいいなぁと思いました。

 

   

ハイライト

文脈もなく、印象に残ったシーンをつらつらと書いてみます。

 

 

綺麗な平岡

ムサニというかなりよい環境で心が表れたのか、平岡がねたみも嫉みも口に出さず、希望を胸に前を向いている感じがすごく良かったです。

目が空色で非常に澄んでいました。(笑)

 

そりゃーそういうシーンは必要だよね!監督わかってるぅ。みたいな。 

りーちゃんや矢野さんに飲み会でいじられているところとかみてみたいです。(笑)

 

彼がタッグを組んでいるタローが問題を起こしたのは”みじかい”監督とのことですが、この人はタローが演出になって一緒に仕事をしたい人として10話くらいで言及されています。

有言実行の男。タロー。大物感が出てきましたね。

長井龍雪 - Wikipedia

 

 

 

最良カット?

一番のガッと心に残ったのは、終盤でゴスロリ様が原画作業をしている際の左側から見たシーンです。上のツイートにもあるやつ。

なんだろう、アングルの珍しさ?ゴスロリ様の美しさ?よく分からないのですが、とにかく目が奪われました。

 

ゴスロリ様は美味しいキャラですよね。

登場シーンはほんの少しでしたが、その少しのギャップですらこのキャラは実はこんなキャラなのです。というのがちゃんと描けていました。

 

みゃーもり訪問時に帰ってきたときに帰ってきたときジャージゴスロリ様がきゃって、しかもポニテで。おいおい美味しすぎかよ。

ゴスロリ様のキャラと毅然とした態度はいわば監督の要求に振り回されないための鎧、というのはアニメ放映時から演出されていたことですが、小笠原さん(素)とのギャップは結構でかいな、、、

 

 

ゴスロリ様関連で

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  アニメ SHIROBAKOより

ちなみに上のシーンはアニメに小笠原さん(素)→敏腕ゴスロリ様に切り替わるスイッチのシーンを描いていたと聞いたことがあります。

 

私たちが気づけなくても、絵の中には多くの意図が込められているんでしょうね。

 

あと、キャプチャするためにコマ割再生していたのですが、このシーンめっちゃ丁寧に動いています。手とか髪とか。神は細部に宿るってやつです。

 

 

関連書籍

シロバコがすきそうな人に興味をもってもらえそうな本を少し紹介します。

 

まずは「アニメタ!」。

打ち切り寸前だったのがツイートがばずって不死鳥のように復活を遂げた漫画です。

元アニメーターの方が書いているアニメーターを主題においており、こんな風に作品ができているのか、というのがわかります。

 

 

 

あとは、アニメ作りの話というよりアニメ業界にいる人の(恋愛成分強めの)ストーリーですが、”あの花”を下敷きにしたと思われる話もあったりもするのでおすすめです。

 

 

 

herumo.hatenablog.com