【ネタバレあり】漫画「まどろみバーメイド」感想 屋台と美女と世知辛さと
こんばんは、へるもです。
お酒のマンガは少し抵抗があったのですが、面白いマンガを見つけました。
「まどろみバーメイド」 1巻、2巻、3巻の感想です。
あらすじ
wikipedia先生から引用してこようと思ったらひっかからない!
屋台バーで最高の一杯を。気鋭イラストレーター・パオの初コミックス! 美麗カラーページ収録!!
月夜に現れては消える気まぐれな屋台を営む女性バーテンダー・雪。風変わりな彼女の作るカクテルは誰かの心に忘れられない味を残す。http://houbunsha.co.jp/comics/detail.php?p=%A4%DE%A4%C9%A4%ED%A4%DF%A5%D0%A1%BC%A5%E1%A5%A4%A5%C9 芳文社の紹介ページより引用
お酒の漫画といえば「バーテンダー」「ソムリエール」「なつこの酒」あたりですが、これらと比較して(しなくても)、本作品は非常に口当たりがよく、飲みやすい仕上がりになっています。
お酒は服と同じで割りと知識で殴りあうという面があるので、どうしても情報強者たる主人公の説教くささや、それを転じさせようとした無理やりのよい話のイメージがありますが、本作品には驚くほど軽く読めます。
主人公の雪が実力はあるのですが、抜けたところのある親しみやすいキャラクターなんですよね。
友人グループに敵は絶対にいないだろうな、みたいな。
もちろん調子にのったおっさんの想像を上回るお酒を出して一本とられたみたいな描写はあるんですが、ただバーテンダーであり続けるだけで余計なことはまったく言わないというのが凄く小気味よいです。
とびとびですが無料視聴できるようです。
まどろみバーメイド - 早川パオ https://t.co/38IX1gyAZC #pixivコミック
— なっつん丼@全自動残業製造機 (@nattttttttttunn) 2018年11月18日
バーテンダーにとっての非日常
我々一般人にとってはバーというのは非日常なのですが、既にちょいちょい漫画になることが出てくるようになってきて、バーという存在の神秘さはなくなってきました。
そこで、バーテンダーにとっての非日常とその人となりを描いたのが本作だと思います。
屋台で移動するバーというのは非常にいいコンセプトだなと思います。そんな屋台があったら行ってみたいし。場を外にすることで、風景や季節性も絡めたお話になっていますし、ふらりと立ち寄ることができるので色んな人がきても違和感があまりない。
「まどろみバーメイド(早川 パオさん)」の屋台バーってリアルにいるんだ。面白そう。https://t.co/0kq5iwCMtS
— ユズナ (@ikefukurouANZUU) 2018年11月20日
と思ってたらあるようです。いってみたい。
加えて、日常シーンも結構あってそれがいい味をだしています。
日代子という胸がでかい女は頭に栄養がいっていない(偏見)みたいなキャラがいるんですけど、家でも空のボトルを持っているシーンがあるんですよね。馬鹿キャラみたいな扱いですけど、家でも練習をする、あるいはついついボトルを手にとってしまう仕事人なんだなーと感じました。
バーから抜け出せることで豊かな世界観を内包できるようになったというのは凄いです。
もちろん奇をてらっただけではない
本当にあっているのかよく分かりませんが、バーという題材にも真正面から相対しています。
バーというと求めるのは何でしょうか。静か、特別、ラグジュアリー、大人、色々なワードが思い浮かびますが、最終的には珍しい体験ができればいいと思いました。
そこに関しては外しません。正直あっているのか分かりませんし、覚えられませんが、でもしょうゆを入れたカクテルとか、一年に一夜だけ咲くユリ「月下美人」を漬け込む、とか否応なく興味が惹かれてしまいます。
誰がための屋台か
読み進めていくうちに感じる違和感は、「私、屋台が好きなんです!」みたいなオーラがまったくない、ということ。
メタ的なことになってしまいますが、屋台でバーをやっているのだからそれに対する主人公の想いがもっと演出されてもよいと思うんです。まぁそもそもあまり喋らないキャラなのですが。
もしかしたら見逃しているのかもしれませんが、屋台というロケーションのすばらしさについて言及するのはお客さんばかり。お坊さんとかお勤めあがりのおっさんとか。
川沿いだったり桜だったり凄く綺麗で印象的な絵ばかりで騙されそうになるのですが、雪が屋台それ自体について語るとき、むしろ硬質で否定的な表情をしているという印象すらもっています。
(例外といえば、祥子さんと店名を決めるときくらい)
実際、不安定な収入を心配した騎帆にも”一般的なバーではなかなか勤まらないと思いますので”(1巻)と答えて口利きを暗に断っています。
"今がいい"という返答ではない。この言葉のチョイスに彼女の痛みを感じるのは私だけでしょうか。
彼女は屋台で戦っているのでしょうか、屋台に逃げいているのでしょうか。
雪の退社と社会人としての感情移入
腕はあるのに根無し草な生活を続ける雪。
これまでの描写から一人でもやっているから一人で屋台をやっているというよりは、それしかなかった(と本人が決めている)様子が伺えます。
個性と職場の相性が最悪で、雪は一流の職場をやめるしかなかったようです。
昔はまーそんなこともあるよね、としか思わなかったですが、社会人になって10年ほどになるとここら辺の世知辛さはなんかつらいですよね。
社会の歯車という言葉がありますが、歯車がまず求められるのは能力とか技術とかでなくて、周囲との噛み合わせです。そうでないと組織として動けないので。
ただ、仮に歯車があわなかったとき、自分が歪すぎるのか、周りが歪なのか、みんな歪ではないけどたまたま合わなかっただけなのか、それを測る手段はありません。
そうなると結局のところマイノリティが変という話になり、無能・変なやつという烙印を押されてしまう。
雪は少し風変わりな人間ではありますが、非常識というわけではなく、善良な努力家です。それでも彼女と社会が繋がれる場所は今のところ屋台だけです。
雪の理想は屋台ではない、というのは検証の薄い私の見解というだけですが、仮にそうであるならば、彼女にとってしっくりとくる場所ができればよいなと願わずにはいられません。
品評会の色とあわなかった蛇、会社の色とあわず(?)職場を去った雪。
いろいろなお酒のまぜて調和させるカクテルを扱う彼女たちですが、人と人、人と会社の調和からはじき出された存在であるというのは、題材として非常に興味深い。
ストーリーはこれからめぐる
風変わりな主人公とお酒の物語が続いてきましたが、話が進むにつれてポツポツと彼女の過去について語られることが増えてきました。
この漫画がどこに向かっているのかわかっていませんでしたが、ただのお酒の話ではなく、雪の話にシフトしつつあります。
彼女の希望はなんなのか。それはよくわかりませんが、家族や手放した店への思いがひとつのキーワードになっているのでしょう。
今後の展開に期待です。
4巻は2018年12月発売です。楽しみ。
早川パオ氏と12正座ブラ
ちなみに、イラストレーターさんの漫画のようで、早川パオと調べると12正座ブラがヒットします。
最初からこの情報を知っていたら食わず嫌いで見ていなかったかも。漫画とはまったく関係ないのですが、ブラの人の漫画とかおっさんにはイメージ的にきつい。つくづく人生はめぐり合わせだなと思います。
お勧め漫画です~