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【微ネタバレあり】映画「ペンギン・ハイウェイ」 感想と考察 夏休みを彩る映画になるだろう

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森見登美彦 ペンギンハイウェイ製作委員会

 

 「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦さん原作のアニメーション映画です。見ているときには気づきませんでしたが、なんと120分! の長編。その長さを感じさせない疾走感のある映画でした。

 

ポスターのペンギンの無表情さが逆にかわいいですよね。グッズがほしかったのですが、すでにどこも完売状態で悲しかったです。

  

小学4年生のアオヤマ君の住む街で、ある日突然、ペンギンの群れが出現する怪事が起こり始めた。ペンギンの正体と彼らの目指す先についての研究「ペンギン・ハイウェイ研究」を始めたアオヤマ君は、顔なじみの歯科医院のお姉さんがペンギンを出現させる瞬間を目撃する。だが、なぜペンギンを出せるのかは、お姉さん自身にも分かっていなかった。

ペンギンの出現法則を解明しようとお姉さんと実験する一方、アオヤマ君は友人のウチダ君、同じクラスのハマモトさんとの3人で、ハマモトさんが発見した森の奥の草原に浮かぶ謎の球体〈海〉についての共同研究を始める。やがてアオヤマ君は、〈海〉とペンギンとお姉さんの奇妙な関連性に気づく。

wikipediaより

 

※本投稿は映画本編のネタバレを含みます。物語の核心部分にはできるだけ触れないようにしていることから微ネタバレとしていますが、性質上、完全にネタバレを防ぐことをできないことはご留意ください。

 

 

 

 

ぱっと振り返っての感想 

 

おもしろかった!

 

同じ劇場にいた子供たちはコミカルな展開に楽しそうにしてましたし、親御さんは少しうるっと来ていたようです。

 

本作の魅力は、大人にとっては昔そんなことやったわーというあるある感であり、年齢関係なくこんな体験してみたいというわくわく感、だと思います。

 

物語の謎は実は結構難解なのですが、共感できる体験を下地に冒険/SF(少し不思議)/夏休み/成長という定番の物語を作ってきているので、ストーリーの細かな部分ではなく、その場面場面を素直に楽しむことができました。

 

見せたいものだけを見せられている…悔しい!でも(略

 

 

いちいち共感できる本作の魔力

 

冒頭を少しすぎてから中盤にかけては、それ自分もやったわ!という共感の嵐でストーリーとアオヤマ君というキャラに一気に引き込まれました。

 

山の中を冒険したり、秘密基地を作ったり(そして別グループにあらされたり)、この町(世界)の外はどうなっているのだろうと思索をめぐらせたり、不思議に思うことについて実験してみたり。

 

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森見登美彦 ペンギンハイウェイ製作委員会 予告動画より

冒険だぜ!

 

 

管理人は町もあれば山もある田舎過ぎない田舎で子供時代をすごし、フェンスを乗り越えた先にある木の上にベニヤ板を貼り付けて秘密基地を作った口です。映画を見ながら、あーそんなこともやったなぁと普段は思い出せない楽しかった記憶が次々と思い出されます。

 

もし都会暮らしで冒険する余地がなかった人でも、学校の中で普段は立ち寄らない場所にいってみたり、夜9時以降はちょっと別の世界という感覚はやはりあったのはないでしょうか。

 

  

すばらしい大人たちというわくわく感の源

 

中盤からの物語にふくらみをもたせるのは地味に良キャラがそろっているのは大人たちです。みんな人間できすぎててつらい。特にアオヤマ父。あのアオヤマさんがいて、このアオヤマ君あり、という感じ。

 

 だいたいの大人は子供のいうことを真剣にとりあわず、子供の行動を既存のルール、各人が思う”普通”にあてはめます。子供には圧倒的に経験地が足りず、責任(大きすぎる失敗したときに社会が与える罰)も取りえないことを考えると当たり前です。

 

そのためジュブナイル映画では割と抵抗勢力(敵)として描かれますが、本作ではみんな子供たちを見守る立場です。メタ的に言えば、ドラえもんのようなお助けキャラがいないので、その代わりを務めているのかもしれません。

 

やたらと知的な二人のお父さんに、とりあえずは好きにさせるお母さん。普通のご家庭なら断食して体調不良になった子供には教育的指導が入ります。復帰して美味しそうに食べる様子をうれしそうに見守る母親や、思考の袋小路にいる青山くんにヒントを与えてくれる父親の頼もしいこと。

 

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森見登美彦 ペンギンハイウェイ製作委員会  予告動画より

一緒に遊んでくれるお姉さん

 

 

お姉さんの魅力は一言では語りつくせない。アオヤマ君をあなどらないフラットさを持ち、体調不良を隠せない弱みをさらし、それでも実はどこまでもアオヤマ君の保護者、年上のお姉さん、アオヤマ君にとっての未知の憧れとして役割からは外れません。

 

アオヤマ君を部屋に招くシーンはそれらが凝縮されていました。緊張するアオヤマ君、自分はほとんど食べないのに作る二人分のパスタとサラダ(美味しそう)、疲労による寝落ち。そのアンバランスさはお姉さんのとてつもない魅力につながっているのとともに、平穏な日常と異常な空間をいったりきたりする本作の象徴になっているように感じます。

 

(ちなみにあの時お姉さんは食事をしたのでしょうか。途中までは食事シーンなのに食べているのはアオヤマ君だけという描写がされているように思いましたが、もう少し先のシーンではパスタが空になっていました。自分の早合点?ミス?)

 

 

 

活き活きと動く子供たち

 

冒険するときは川沿いに移動したり、”~計画”とか作戦とかにこだわってみたり、秘密基地におもちゃを持ち込んで遊んだり。中学生を過ぎるとそんな振る舞いはちょっと恥ずかしい。小学生だけに許された特権を甘受するさまはほほえましく、子供であることがきちんと描写されています

 

三人組が"海"を観察するシーンはとてもよかったです。この世の幸せの象徴です。

 

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森見登美彦 ペンギンハイウェイ製作委員会 予告動画より

普段は可愛いハマモトさん彼女の恋の行方はいかに

 

 

忘れられないのがハマモトさん激怒事件

 

大人なら失敗したときのことを考え思考の逃げ道を作るものです。明るいながらもどこか諦念の雰囲気をまとっていたお姉さんのように。が、大人びたキャラであったハマモトさんでさえも熱中し真摯に向き合っていたものを台無しにされたときの感情の発露を抑え切れません。だってそれが子供じゃない?

 

あの怒り方はハマモトさんが感じる目いっぱいの怒りを表現できたものではなく、内心ではもっともっと怒っているのではないでしょうか。アニメーションや声優さんの熱演で隠れた?名シーンだと思います。

 

その原因となったガキ大将の件も凄く子供っぽい。(まぁ彼らこそがまさにこども!ですが)教室で自慢げに自らの成果を誇ったり、大人たちに自分の経験を誇らしげに語ったり。友達との約束を破って後悔するとわかっていても大人の期待に答えようとしてしまう子供の健気さが見え隠れしているようでした。もしかしたら自分たちの行いが実は結構ダサいことに気づいていたのかもしれません。

 

お助けキャラとか道具を頼りにするジュブナイル映画とは違って、ちょっと能力が高い子供たちが大人の方法論を使って事件を解決する本作では、この子供っぽさの表現が特別に重要なのかなと。主人公は、なんでもないことが新鮮で楽しく、別れを恐れ、怒りや悲しみを我慢しきれない子供たちで、子供の皮をかぶった大人(=作者の分身とか)ではないのです。

 

キャラクター性と演出が混じった感想になってしまいましたが、説得力を増すためのこういう緻密さというのは本作のような傑作の条件だと思います。

 

 

爽快感あふれる終盤とその終わり

 

物語で重要なのはぶっちゃけ最後だけ、っていう印象があります。よく分からんまま進んでも終盤にカタルシスがあればなんか知らんけど良い映画だった!と思ってしまうくらいで、だからこそ終盤の表現は難しい。

 

だいたいは何らかの敵を倒してハッピーエンド、ですが、本作の締めくくりはちょっと違いました。もちろん敵(排除しなければいけないもの)はあるんですが、真相を解き明かし、ペンギンが爆走するだけです。ですが、その圧倒的な映像美と爽快感

 

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森見登美彦 ペンギンハイウェイ製作委員会 予告動画より

 

 

それまでは静かでビターな雰囲気というか、"間"がとられていたのですがいざ解決編に入るとダムが決壊するように何もかもが動き始めます。かわいいペンギンたちがばーっと動き、生まれ、またばーっと動くさまは圧巻で(語彙力)、お姉さんの明るくいい意味で大雑把な雰囲気ともよくマッチしています。っていうかちょっと暗めになっていたお姉さんが元気になってよかった。

 

動画であり質も高いアニメーション映画というのは最適な選択肢で、大画面で見れて本当に良かったと心底思いました。

 

もともとハイスペックなアオヤマ君とその仲間たちでしたが、ひと夏を経て確実に成長した様がみてとれる締めくくりで物語が一旦とじられます。アフターストーリーみたいなのがあればよいなぁ。特にハマモトさん関連。 

 

 

おっぱいには賛否両論?少年たちも可愛いぞ(語弊有り

 

ツイッターとかでは、おっぱいハイウェイとか不名誉な?(むしろ名誉か?)あだ名がついてしまい、舞台挨拶でも必ずでてくるのが「おっぱい」についての話題です。特に物語り序盤~中盤にかけてお姉さんのおっぱいが強調されるせいか、それに強く反発する感想もありました。

 

 

同じ時間に見ていた子供たちも”冒険譚”のコミカルな演出やペンギンの可愛さに終始楽しそうにしていたのですが(この時期になると人が少ないのでこそこそしゃべるのが許容される空気がありました)、おっぱいシーンは男の子も女の子も完全に無言ww

 

異性の変化に気づいたり、自分の成長にしたがって異性の見る目が変わるなんて誰にでも訪れる体験なので、やっぱ見ちゃうよねと思ったり、こんな風に見られているんだという興味深さも結構あったんじゃないでしょうか。だからこそ気まずさで黙っちゃう。それも本作の魅力である、共感、あるある感の発露だと思います。

 

というか、そもそもアオヤマ君は世間で忌避されるような種類の視点ではお姉さんのおっぱいを見ていないですよね。最初に魅力的なお姉さんがいて、何故お姉さんに惹かれるのかを考える上での材料としておっぱいに焦点が当たり、そう思ってしまう遺伝子の不思議に思考がとぶ。

 

アオヤマ君にとっては性的云々以前に(少しはあるでしょうが)、本作におけるペンギン発生世の果てはどんなものかという疑問と同様に世の中の不思議のひとつです。おっぱいと、なぜそれに魅力を感じるかについては。

 

 いろんな意見があるのは分かりますが、むしろこの「おっぱいの壁」を越えてお茶の間にも放送できるようになってほしい。 

 

 

ちょwお姉さんww確かにアオヤマ君もウチダ君もかわいかった。ウチダ君は釘宮さんが演じておられ、ファンからの熱いツイートがありました。

 

 

 ウチダ君は冒険部分では情けないところをさらし続けますが、ハマモトさんの夏祭りの浴衣にノーコメントアオヤマ君をフォローするように「似合っているよ」といったり、おっぱい連呼のアオヤマ君をいさめ?たり、精神的に少し大人です。頭はよいけど周囲とのズレに対して無頓着な子供っぽさを持つアオヤマ君とはいいコンビでした。

 

 

ちなみに映画感想の流れからはズレますが下みたいな意見も。

 

 

確かに。

 

 

夏の定番アニメ映画になったらいいな

 

冒険にSFに夏休みに、とてもいい映画だと思います。サマーウォーズに続く夏の定番になればいい。映画っていいなと思う作品でした。